小惑星・月による恒星食の観測記録

在りし日の倉敷天文台

20240425(UT) (801) Helwerthia による恒星食(減光)

1 予報帯

・青い+印が観測位置。ほぼ中心。

 

2 光量グラフ

・11h38m25s~39m50s までのグラフ

・exp=338ms Gain=400/600

 

3 減光時刻の解析

 

4 復光時刻の解析



5 光量測定画面

 

6 PC動作確認

LimovieのVerification of the time PC recorded でのグラフかSharpCapのタイムスタンプ遅延及びフレームドロップの確認を行う。

・掲載は後半照射のみ。

・タスクマネージャーでSharpCapの優先度を上げるのを忘れていたため、少しバラツキが見られる。

 

7 露光時間の決定経過

近年、掩蔽の予報精度は向上しており、私たちもそれに応える観測精度で観測する必要がある。そのための露光時間の決定方法を先般のCMOS勉強会で学んだ。今回はその考え方に従って露光時間を決定し、良好な結果を得た。

【事前に小惑星の予報位置精度を確認する】

小惑星の位置精度はJPL予報に掲載されており、Limovieの Asteroid timing guide で下記のとおり見ることがきる。

今回の Helwerthia の精度は、時間換算で0.084sなので、観測結果の時刻誤差がこの数値以下に収まっていなければならない。

そこで、観測前に推定時刻誤差を導出する必要がある。方法は・・・

① できるだけ現象時刻直前に試写を行い、グラフからS/N値を読み取る

② 読み取ったS/N値で予定露光時間を割った数値が推定時刻誤差である

③ その誤差が上記の数値(0.084s)以下であれば良い

と、比較的簡易である。

【観測の実際】

モニター画面の写り具合から露光時間を338msとしたが、今までのように「時間分解能」を考えるともう少し短くしたいところだった。

しかし、その気持ちはおいておいて、338msの露光時間で観測10分前に試写したところ、以下のグラフを得た。

S/N値は8.6であるが、現象時に急変することもあるので控えめに6として推定時刻誤差を計算した。

0.338s÷6≒0.056s<0.084s となり、338msでも十分な精度で観測できると思われた(理屈がわからないので半信半疑)。

結果として、推定時刻誤差0.056sに対して、減光0.043s、復光0.049sの時刻誤差だった。JPL予報の誤差0.084sの半分程度であり、軌道改良に有効な観測結果を得ることができた。

条件にもよるが、必ずしも長い露光時間=観測精度低下、ではないらしい。

その目で過去の観測結果を見てみると、300msを超える露光時間でも観測精度が0.0※※ms程度に収まっている例が減光幅が大きい現象を中心に多く見られた。今まで先入観にとらわれて、気付けなかったようだ。

今回は観測地がほぼ予報帯の中央で、2s程度の減光が想定されたので短時間露光を考慮することはなかったが、キワに近い、もしくは減光時間が短い現象の場合は露光時間を短くする必要があり、そのためS/N値が悪化する=想定時刻誤差が拡大しやすくなる。JPLの位置精度が低い現象ならともかく、精度が高い小惑星の場合の観測に当たっては注意する必要があると感じた。